作品に夢のような魔法を授けるため、ヴァン クリーフ&アーペルはインスピレーションの源やメゾンの歴史、工房に培われた職人技を常に探究しています。専門学校を擁し、伝統あるサヴォアフェールを次世代に伝えています。これは創造・継承というメゾンが守り続ける価値を反映した施設です。エナメル、ミニアチュール ペインティング、貴石やオーナメンタルストーンを用いたマルケトリ、彫刻やエングレービング。メティエダールは作品と共に磨き上げられ、また同時に、時間に対する独自のビジョンを形にする新たな技法も開発されています。

    レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ、ホワイトゴールド、ダイヤモンド、マザーオブパール、ツァボライトガーネット、スペサタイトガーネット。ポエティック コンプリケーション コレクション、ヴァン クリーフ&アーペル。

風景を描き、人物を彫刻し、一筋の光に実体を与える。これらを担う職人たちの手によって、文字盤が彩られ、精密に物語に命が吹き込まれます。作品の中でメゾンを象徴するサヴォアフェールはひとつになり、タイムピースに詩情を吹き込みます。

エナメル装飾

ジュネーブにある時計制作の工房では、エナメル工房と専門学校が中心となってこれらのサヴォアフェールを守り、発展させています。

メゾンはプリカジュール エナメルやグリザイユ エナメルなどの伝統的な技法を極限まで探究しています。グリザイユ エナメルはポン デ ザムルー コレクションを象徴する技法であり、キアロスクーロ(明暗法)の効果をもたらします。こうした古来の手法にとどまらず、ヴァン クリーフ&アーペルは革新的な技法の開発にも取り組み、装飾に立体感をもたらしています。メゾンのスタジオが考案するデザインは、そのひとつひとつが新たな挑戦であり、時に何年もの時間が研究と開発に費やされます。文字盤が表現する物語のために、求められる技術と目指すスタイルのバランスを探りながら、科学と芸術の対話が繰り広げられます。文字盤が表現する物語のために、求められる技術と目指すスタイルのバランスを探りながら、科学と芸術の対話が繰り広げられます。

レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチのエナメルに施されるセッティング

朝陽の下で花を摘む優美な妖精に命を吹き込んだレディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ。このタイムピースに用いられているユニークなセッティング イン エナメルの技法は、メタルのパーツを使うことなく、プリカジュール エナメルの中に貴石をセットするものです。エナメルに正確なカットアウトを施し、その中にぴったりと貴石を嵌め込みます。その後、温度変化の調節に細心の注意を払いながら再び焼成を行い、全体を固定します。これにより、宝石が浮かんで見えるような“フローティング”効果が生まれ、貴石の輝きが高められます。作業に250時間以上が費やされる、真のミニアチュール作品です。

    セッティング イン エナメル。レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ、エクストラオーディナリー ダイヤル コレクション、ヴァン クリーフ&アーペル。
プレス&ホールド

いくつもの工程を経て命を吹き込まれたエナメルモチーフによって、作品は力強い色彩と鮮烈な輝きを宿します。シャンルヴェ、ヴァロネ、プリカジュール、グリザイユ、ジェムセッティング、さらにはシェイプド エナメルといった技法を組み合わせることで、文字盤の物語は生き生きと描き出されます。

ミニアチュール ペインティング

ミニアチュール ペインティングの歴史は古代にまで遡り、中世にはこの伝統技法によって高い評価を得た芸術家が現れました。画家のパレットさながらに、エナメル職人はシリカ粉末と極めて細かく粉砕した顔料、油を配合し、さまざまな色のエナメルを作り出します。タイムピースでの作業は、エナメル職人が双眼ルーペを装着して行います。

セーブル毛の細筆を使って、形状や色のグラデーションを少しずつ表現していきます。エナメルは明るいトーンから深みのある色合いへと、極めて正確に順序を守りながら、1色ずつ塗布されます。1つの色を塗るたびに焼成を必要とし、その時間と温度を判断できるのは熟練のエナメル職人に限られます。フリーハンドで行うドローイングが正確さと巧みな手わざ、画家としての才能が求められるのに対し、焼成の各プロセスは細部への配慮が求められます。

バレリーヌ ミュージカル エメラルド ウォッチに施されるエナメル ミニアチュール ペインティング

レディ アーペル バレリーヌ ミュージカル エメラルド ウォッチの上では、彫刻とエングレービング、ハンドペイントが施された幕が開き、ミニアチュール ペインティングの軽やかに舞うバレリーナが姿を現します。

72時間もの時間が費やされるこの技法は、真のミニアチュール作品に命を吹き込み、ディスクのボリュームを調整して軽量化することにも貢献しています。

プレス&ホールド
    エナメル ミニアチュール ペインティング。バレリーヌ ミュージカル エメラルド ウォッチ、ポエティック コンプリケーション コレクション、ヴァン クリーフ&アーペル。

彫刻とエングレービング、ヴァン クリーフ&アーペル。

彫刻職人の技は、ゴールドやマザーオブパール、さらにはオーナメンタルストーンといった素材のブロックから、人の姿を作り出し、命を授けるところにあります。それぞれの素材から、外観や光の反射を考慮しベルベットのような質感を引き出すために、職人はまず目で、次に手でその素材を捉えます。彫刻は、文字盤とケースバックの装飾に奥行きとレリーフの効果を与えます。

エングレービング職人のサヴォアフェールとは、作品にボリューム、深さ、生き生きとした魅力を与える技と言えるでしょう。メタル、マザーオブパール、オーナメンタルストーンに施されるエングレービングは、タイムピースの物語に宿る詩情を表現します。

レディ フェアリー ウォッチに施される彫刻とエングレービング

ヴァン クリーフ&アーペルの時に対するビジョン、ポエトリー オブ タイム(詩情が紡ぎだす時)を守護の女神のごとく見守るのは、サファイアとダイヤモンドのドレスを纏った妖精。白に虹色の輝きを帯びたマザーオブパールの雲に腰かけ、魔法の杖で分を指し示す優美なその姿は、その全体がホワイトゴールドの彫刻によって作られています。

    ボリュームを彫刻で表現した妖精。レディ フェアリー ウォッチ、ポエティック コンプリケーション コレクション、ヴァン クリーフ&アーペル。
    ケースバックのエングレービング。レディ フェアリー ウォッチ、ポエティック コンプリケーション コレクション、ヴァン クリーフ&アーペル。

ケースバックから眺められる回転錘には、満月と星空のエングレービングが施され、文字盤の物語の続きをそっと教えてくれます。

ストーンセッティング、マザーオブパールとオーナメンタルストーンのマルケトリ

セッティング職人の役割とは、宝石を貴金属の上にセットし、石の持つ美しさを際立たせることにあります。地金の石枠が可能な限り外から見えないようにしながらも、石はしっかりと固定されなければなりません。デザインと宝石に合わせて、プロング、グレイン、クローズド、サポート、あるいはレールなど、異なるセッティングの技法が用いられます

    Montre Lady Arpels Jour Enchanté, or blanc et jaune, diamants, saphirs colorés, grenats spessartites, turquoise, émail plique-à-jour, façonné, serti dans l’émail, serti supporté. Collection Cadrans Extraordinaires, Van Cleef & Arpels.

一方、マルケトリ職人は宝石を繊細な構図の中に組み込みます。パターンを構成する宝石やマザーオブパールは、色合い、硬さ、表面の特徴や不透明度などに基づいて丁寧に選ばれています。さらにマルケトリでは、多種多様な装飾パーツを成形するという高度な技術が求められます。

レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチに施されるサポートセッティングとターコイズ マルケトリ

レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチの背景を照らす太陽には、スペサタイト、イエローサファイア、ダイヤモンドといった貴石が輝きます。太陽の日差しの上で、ダイヤモンドはサポートセッティングの技法により浮かんでいるように見えます。ヴァン クリーフ&アーペルの時計制作工房で開発されたこの技法は、台座を見せることなく宝石を固定し、今にもこぼれ落ちそうな雫のように見せる効果を実現しています。

    サポートセッティング。レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ、エクストラオーディナリー ダイヤル、ヴァン クリーフ&アーペル。
    ターコイズ マルケトリ。レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ、エクストラオーディナリー ダイヤル、ヴァン クリーフ&アーペル。

背景の空を構成するのは、3色のターコイズ。卓越性を追求するメゾンの伝統を受け継ぎ、宝石工芸を専門とする職人の仕事はターコイズのブロックを選定するところから始まります。それは最高の水準を満たすと同時に、作品が求める形や色を備えたものでなければなりません。そして、まさにパズルのように、文字盤のデザインに可能な限り忠実に再現されます。この工程でターコイズがカットされ、朝陽に照らされた空の異なる色合いを表現します。