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2021年春の開催につづき、2022年秋に京都の下鴨神社で行われたエキシビション「LIGHT OF FLOWERS」では、水の循環や季節のうつろいをテーマに、美しく咲き誇る季節の花に加え、土へと還っていく直前の落葉の美しさや、来るべき春に向けて生命が宿る地中の躍動感が表現されました。
ヴァン クリーフ&アーペルのパトリモニアルコレクションと片桐氏の手によるいけばな作品が並んだ本展の注目すべきは、切り花ではなく根を残した植物をも使ったことです。終了後、片桐氏はそれらを自身の敷地に植え直し、育てています。消えてなくなるものという、いけばなの前提を更新する試みもまた、異種間のコラボレーションだからこそ生まれた発見だと言えます。
生命が輝く一瞬を永遠のものにしたい。ヴァン クリーフ&アーペルは、植物や動物を徹底的に注視し、再解釈することで、ジュエリーとして生まれ変わらせます。敬意をもって観察し、形状の本質を理解したうえで、異種(植物と鉱物)を融合させるのです。
自然と共にある日本の暮らし。四季の移ろいを生きる花によって表現するいけばなは、この日本的な感性を表す文化として親しまれてきました。この伝統を受け継ぐ片桐氏は、日々の中に生きる自然の美しさを身近な草花に見出し、表現しています。
ヴァン クリーフ&アーペルは、花々の輝きをジュエリーとして表現し、その美しさを永遠のものへと昇華してきました。花々は、繊細な表現が際立つメゾンのスタイルが発揮されるモチーフとして、今もメゾンのクラフツマンシップを支え続けています。
両者に共通するのは、すみれ、コスモスやデイジーといったささやかな小花に焦点を当てていること。何気ないところに咲く花々に美を見出すクリエイションが、コラボレーションの場で共鳴し合いました。
花が咲いている時間は短く、いずれは散っていくものです。しかし、それは次へとつながっていく生命の循環です。片桐氏は、「変化し続けていく営みの中で、だからこそわたし達はその美しさを捕らえておきたい」と語っています。
切って生ければ数日でしおれてしまういけばなの儚さと、何万年という時間をかけて結晶化された石を使い、長く形や輝きを留めるジュエリー。それぞれ表現は異なりますが、人が丁寧に対象を敬い、時間と手間を惜しみなくかけていくことで、多くの人に自然の美の本質を伝えるというプロセスは共通しています。
清らかで慎ましい花が持つしなやかな強さ、植物から鉱物、そして万物へと広がる命の営みを見出すヴァン クリーフ&アーペルと片桐氏。両者のコラボレーションが表現する自然の美と壮大さは、多くの人の心を動かし続けることでしょう。
花道みささぎ流家元。1973年大阪生まれ。人類が原始的にもつ、植物や自然への憧憬や畏敬の念を具現化するために、民俗学を手掛かりに、いけばなの技術を用いた表現方法を模索している。空間設営から撮影までをこなし、個展を中心に精力的に活動を続けている。出版に写真集『Sacrifice─未来に捧ぐ、再生のいけばな』(青幻舎 2015)などがある。近年の展覧会にヴァンクリーフ&アーペルとコラボレーションした「LIGHT OF FLOWERS ハナの光」(代官山T-SITE GARDEN GALLERY 2021)、国際写真展「KYOTOGRAPHIE」(二条城 2021)他。
*本展覧会は、2021年4月22日から5月9日まで代官山 T-SITE GARDEN GALLERYにて、
また2022年11月3日より12月12日まで京都 下鴨神社で行われました。